無痛分娩を検討する際、「赤ちゃんへの影響はないのか」「お産が長引くのではないか」といった不安を感じる方は少なくありません。
実際、無痛分娩にはメリットだけでなく、医学的なデメリットも存在します。しかし、世間で言われていることの中には「医学的根拠のない誤解」も多く混ざっています。
この記事では、よくある「誤解」と知っておくべき「本当のデメリット」を整理して解説します。正しい知識を持つことで、漠然とした不安を解消し、納得のいくお産選びに役立ててください。
まずは、インターネットや周囲の話でよく耳にするものの、実際には医学的に心配しすぎる必要がない「誤解」について解説します。
「麻酔薬が赤ちゃんに届いて、元気なく生まれてくるのではないか」と心配されることがありますが、無痛分娩(硬膜外麻酔)で使用される麻酔薬が、赤ちゃんに直接的な悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
麻酔薬は脊髄の近くの「硬膜外腔」という場所に注入され、神経に作用します。血液中に入り込んで胎盤を通過し、赤ちゃんに届く量は極めて微量であるため、呼吸抑制などの重篤な影響が出る心配はまずないとされています。
「痛みに耐えてこそ母親になれる」「楽をすると愛情が薄れる」といった精神論を言われることがありますが、これには科学的な根拠は一切ありません。
むしろ、痛みを和らげることで母体の疲労が軽減され、産直後から笑顔で赤ちゃんに接することができるというメリットがあります。痛みの有無と、子供への愛情の深さは無関係です。
これは「期待しすぎ」による誤解です。「無痛」という名前ですが、感覚が全くなくなる全身麻酔とは異なり、お産の進行を感じるための感覚は残されます。
痛みを100から0にするのではなく、「100の痛みを2〜3程度に抑える(和痛)」ことを目指すのが一般的です。そのため、「全く何も感じないと思っていたのに、生理痛くらいの痛みはあった」と感じるケースもあります。

誤解がある一方で、医学的に起こりうるデメリットやリスクも存在します。これらは事前に知っておくことで、心構えや対策が可能です。
麻酔の影響で陣痛が弱くなり、お産が進みにくくなる「微弱陣痛」になることがあります。痛みが取れることで体に入っていた力が抜け、筋肉の収縮が弱まることが原因の一つです。
この場合、陣痛促進剤を使用して陣痛を強める処置が必要になるケースがあります。
分娩の最終段階(いきむ時期)になっても、麻酔が効いているといきむ感覚が分かりにくかったり、うまく力が入らなかったりすることがあります。 その結果、赤ちゃんが出るのを助けるために、吸引カップや鉗子(金属の器具)を使用する「器械分娩」になる確率が自然分娩よりやや高くなります。
体質によっては、麻酔薬の副作用が出ることがあります。よくある症状としては以下のものがあります。
麻酔が効いている間は、足の力が入りにくくなったり、しびれを感じたりして、歩行が困難になることがあります。そのため、分娩中はベッド上で安静にする必要があり、トイレなどは導尿(管を入れて排尿する処置)で対応することになります。
身体的なデメリット以外にも、費用や環境面でのハードルも存在します。
無痛分娩は通常の分娩費用に加え、麻酔手技料や薬剤費、管理料などがかかります。病院によって異なりますが、プラス10万〜20万円程度の追加費用が発生するのが一般的です。
無痛分娩を行うには、麻酔の知識を持った医師やスタッフの体制が必要です。そのため、全ての産婦人科で対応しているわけではありません。 特に「24時間いつでも対応」できる施設は限られており、希望するエリアで病院が見つかりにくい、あるいは予約がすぐに埋まってしまうことがあります。
デメリットやリスクを理解した上で無痛分娩を選択する場合、以下の点を確認しておくことで、「こんなはずじゃなかった」という後悔を防げます。
万が一、麻酔が効きすぎたり、母子の容態が変化したりした場合に、すぐに適切な処置が受けられるかどうかが重要です。 麻酔科医が常駐しているか、緊急時のマニュアルが整備されているかなどを、事前の見学や説明会で確認しておきましょう。
無痛分娩には、あらかじめ決めた日に入院して行う「計画無痛分娩」と、陣痛が来てから麻酔を行う方法があります。 計画分娩の場合、スケジュールが立てやすい反面、予定日より早く陣痛が来た場合に無痛対応が間に合わない(自然分娩になる)リスクもあります。病院の方針をしっかり確認しましょう。
無痛分娩には「微弱陣痛になりやすい」「器械分娩の率が上がる」といったデメリットは確かに存在しますが、これらは適切な医療介入によってカバーできるものがほとんどです。
一方で、「赤ちゃんへの悪影響」や「愛情不足」といった不安の多くは誤解です。 大切なのは、メリットとデメリットの両方を正しく理解し、自分にとって何が優先かを考えることです。「痛みが怖い」というストレスを減らし、産後の回復を早めたいと願う方にとって、無痛分娩は非常に有効な選択肢の一つです。
公式サイト、あるいはJALA(無痛分娩関係学会団体連絡協議会)のサイトにて、無痛分娩の年間実績が確認できた、京都市にあるクリニックを選定(2025年4月調査時点)。
分娩可能時間や麻酔科医の在籍数といった医療体制や、NICUの有無、費用も調査しています。
| 無痛分娩の 年間実績 | 麻酔科医の 在籍数(※1) | NICUの 有無(※2) | 無痛分娩 可能時間帯 | 無痛分娩の 費用※税込 | |
|---|---|---|---|---|---|
足立病院 | 546件 (2023年) | 常勤6名 非常勤3名 | 9床 | 24時間 | 550,000円~ 652,000円 |
身原病院 | 415件 (2023年) | 記載なし | 記載なし | 24時間 | 557,000円~ |
中部産婦人科医院 | 347件 (2023年) | 常勤1名 非常勤4名 | 記載なし | 24時間 | 600,000円~ |
醍醐渡辺クリニック | 151件 (2021年) | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 590,000円~ |
島岡医院 | 34件 (2023年) | 記載なし | 記載なし | 24時間 | 記載なし |
京都桂病院 | 16件 (2023年) | 常勤1名 | 記載なし | 原則計画分娩 (平日日中) | 570,000円 前後 |
(※1)出典:無痛分娩関係学会・団体連絡協議(https://www.jalasite.org/hp/10469.html
(※2)出典:産後なび(https://www.mhlw.go.jp/stf/birth-navi/search.html?:embed=yes&:linktarget=_blank&01=26&18=01)
無痛分娩の実績について
足立病院(https://www.adachi-hospital.com/numbers/)
身原病院(https://mihara.com/about/outline/)※2023年分娩実績から、無痛分娩割合(平均)に基づき算出
医療法人社団中部産婦人科医院(https://www.nakabe.or.jp/painless.php)
醍醐渡辺クリニック(PDF)(https://hospital.d-w-c.jp/painless_delivery/img/pdf_mutsubunben.pdf)
島岡医院(https://www.shimaoka-ob-gy.minami.kyoto.jp/data/)
京都桂病院(https://www.katsura.com/sanfujinka/labor_analgesia_info.html)
2025年3月15日調査時点
※金額はあくまで目安です。無痛分娩を行なった場合、掲載している費用よりも高くなる可能性もございます。費用の詳細はクリニックに直接お問い合わせください。
無痛分娩は、一般的に硬膜外麻酔を使用して行われます。この処置は高度な技術と経験が必要で、医師であれば誰でも対応できるわけではありません。
そのため、麻酔科医が在籍しているかどうか、何人いるかは、安全かつ計画通りの無痛分娩が可能かを判断するうえでとても重要です。
また、分娩は自然の流れで起こるため、深夜や休日に急に始まることも少なくありません。複数の麻酔科医が常勤で在籍し、交代でオンコール体制を整えている病院であれば、時間に関わらず無痛分娩の希望が叶いやすくなります。
NICU(Neonatal Intensive Care Unit)は、在胎週数や出生体重に関わらず、特別な医療的ケアが必要な新生児を集中的に治療できる医療設備です。
無痛分娩は、母体の心身への負担を軽減する分娩方法として広く利用されています。ただし分娩の種類にかかわらず、新生児には予測が難しい医療的ケアが必要になるケースもあるため、NICUの有無など、施設の対応力を確認しておくことも安心につながります。
NICUのある病院では、生まれてきた赤ちゃんの様子に応じて適切な対応が取れる体制が整っています。